妙なる囁きに 耳を澄ませば
          〜かぐわしきは 君の… 3


 
おまけvv ブッダ様の側がピーンチな場合を考えてみた おまけvv


迷える小羊はパンがお好き?の劇中劇に出したアレみたく、
ブッダ様の側が攫われてピーンチって展開で、
イエス様に頑張ってもらうということになれば、
少なくとも、初案のような
悟れアナンダ、もとえ、起きなさいイエスみたく、
ちょっと情けないオチにはならないんじゃなかろうか。


  というワケで。


早朝のご町内をジョギング途中だったブッダ様、
どこの誰と間違えられたものなやら、
突然、何物からに取り囲まれ、
すぐ傍らへキュキュキュッと急停止したリムジンへ押し込まれ、
不意を突かれてのこと、麻酔を嗅がされ誘拐されました。

 《 イ、イエス…。》

意識が途切れるすんでで、飛ばしたらしき伝心で、
ブッダ様に何か突発的なことが起きたらしいというの、
こちらは松田ハイツの、まだ布団の中にて素早く察したイエス様。
がばりと起き上がって周囲を見回せば、
確かにブッダ様の気配はない。
さっき聞こえたのは、
どこか遠くから届けられた、彼からの最後の一声?

 「ああでも、ブッダにはGPS持たせてないんだった。」

スマホにそういうアプリがあるって聞いたけど、
前以て設定してなきゃ無理だよねと、
起きぬけの髪を掻きむしりつつ焦っておれば、

 「お呼びですか、イエス様。」
 「先生、何かありましたか?」
 「ペトロ、アンデレ、丁度いいところへっ!」

さあ、イエス様、頼もしい仲間と共に怪しい一団を追うのです。
(……あ、なんかもう既に“桃太郎”っぽいぞ。)笑

 「…でも何かその前に、
  梵天さんが何処からともなく現れそうな気がするんだけど。」

 「言えてますッスよね。」
 「あの人、ブッダ様本人へはああいう当たり方だけど、
  そんなブッダ様に誰かが何かしようものなら…ってのがまた、
  簡単に想像つく“お父さん”だし。」

彼らにも容易に想像つくくらいなので、
天界関係者によるちょっかいかけという段取りは
ブッダ様には組めなかったんですが。(誰がそんな自殺行為を…)

 「ただね、
  そうなるとブッダもブッダで
  素直に助けられないんじゃないかなぁとか。」

 「あ・そうか。」
 「貸しを作りたくない相手ってのは、
  誰にでもいますものねぇ。」

いいから とっとと追わんかっ




   ◇◇◇



……というか、
ブッダ様の場合だと
余裕で自力脱出して来てしまいそうな気もしますよね。

“この人たち、私を一体誰と間違えたのでしょうか?
 会話からして、アジア系の外国の人みたいですよね。
 それが気になるので、ちょっとついてってみようかな。
 でもでも、もっと気になるのは、
 イエスの朝ご飯が
 途中までしか出来上がってないってコトなんだよね。
 お味噌汁なくても、ちゃんと食べててくれたらいいんだけど。
 冷蔵庫にインゲンのごま和えがあるの、気がつくかなぁ。
 朝からカップめんってのは無しですよ?
 う〜ん、またもや声だけを届けたりしたら、
 却って不安がったりしないかなぁ。
 何処にいるのか、伝えられたらいんだけど、
 窓が高くて、起き上がらないと外が…見えないなぁ。”

とか何とか、
移動中のリムジンの中で、
割と余裕で落ち着いてるうちはまだいいんですが。


 《 わ〜んっ、ブッダーっ! どこにいるのーっ!》

 「…っ!」


どんな遠くにいようとも、
キミの悲鳴を聞き逃す私ではありませんともと。
がばりと勢いよく身を起こしの、
手首の拘束なぞ、手錠だろうが 強力なガムテだろうが、
めきょっと一ひねりで排除完了。

 「なっ、」
 「なんだ、こいつっ。」

慌てた賊らの手へナイフや銃が出て来ても、
後光の輝きで目測狂わせ、
はっしと真剣白刃取りをご披露し、

 《 あなたは何を恐れているのです。》

心への問いかけで逆に身動き凍結させての、
車を停めさせ、全員をあっさりと平伏させて。

 《 さあ、元の場所へ戻りなさい。》

語りかけだけで“無かったこと”にさえしてしまいかねません。
松田ハイツまでを送らせてから、
そのまま警察へ出頭しなさいと重く念じておいてのさて。

 「イエス、どうしましたか。
  怖い想いさせてごめんなさいね。
  お腹も空いたでしょう、可哀想に。」

無事なまま飛び込んだ自宅には、
涙目の愛しい人がへちょりと座り込んで待っており、

 「ブッダこそ誘拐されたんでしょ? 怖かった?」

 案じてくれるのですか、なんて優しい人でしょう。////////
 だって…あ、手首が真っ赤だよ? 痛い?

 「…あの、イエス様。/////」
 「俺ら帰りますッスね。」

初めての、しかも前置きなしのお留守番をしていた幼子と、
それをぎゅうと懐ろ深く抱きしめる
慈愛の塊のようなお母様としか見えないけれど。
それでもああまで目映いオーラには、誰も太刀打ち出来ないから。
やっぱり何事も起きなんだことになって終しまい、なんじゃあなかろうかと。





     〜Fine〜  13.09.12.


  *象を投げられる人を誘拐というところに、
   根本的な何か物差し上の無理があるというか。(苦笑)


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